1月31日0時06分過ぎに中国の宇宙ステーション「天宮」が月面通過になる予報が「ISS Transit Finder」で出ていました。
ありがたいことに自宅がライン上にあり、しかも「天宮」までの距離が429.35㎞と好条件です。


中国宇宙ステーション「天宮」は光っていませんが、こんなコースを通過する途中で月面を通ります。

天気も良さそうで早速準備をします。
アトラクス赤道儀にミューロン180とMC127Lマクカセを載せます。
ミューロン180にはZWO ASI174MMで「天空」をなるべく大きく、MC127LはEOS80Dを取りつけると月がやや欠けるためにNo.3のクローズアップレンズをレデューサー代わりに入れて月全体が入るようにしました。

そして眼視用にSV-BONYの10㎝屈折に正立プリズム+フォトン12㎜(60倍)で監視します。
ちょうど月全体が見渡せる倍率です。

さあこれで準備OK! 最後にもう一度軌道修正が入っていないか念のためにISS Transit Finderで確認します。

通過時間が0.01秒遅くなり、他もわずかに変わっていますが特に問題なし。
通過5分前からiPhoneで時報を鳴らして待機します。
1分前からMC127LのEOS80Dの録画を開始します(ISO800 1/1600秒)
通過30秒前からミューロン180の174MMの録画を開始(Gain250 0.3ms 約103FPS)
2台の録画中を確認し、10㎝屈折のアイピースを覗き時報を聞きます。
時報が0時6分20秒を告げたところから心の中で1・2・3と数えて「来る!」と思いながら予定のコースを見つめます。
「あれ?見えなかった!!」
30秒ほど待って174MMの録画をストップ、もう30秒ほど待ってEOS80Dの録画を止め、iPhoneの時報も止めました。
中国の宇宙ステーション「天宮」はISSと比較してかなり小さいとはいえ、430㎞の距離ならば見落とすはずはありません。
とりあえず174MMの動画を確認してみます。
通過時刻前後5秒の10秒間です。
予定ではこの画角の真ん中を黒い影の状態で下から上へ通過するはずですが、記録されていません。
私も眼視ではこのあたりを凝視していたので、少しずれたところを通過し見落としたのかもしれません。
EOS80Dの月全体の動画を確認します(時報も入っておりますので音量にご注意ください)
ありゃ~やはり月面を通過していないか~予定通りであれば左下から右上に通過します。
EOS80Dは30FPSで録画しておりますので画像にすると1分で2400枚の画像が記録されています。
その2400枚を念のため比較暗合成してみました。

影も形もありません、これで月面を通過していないことが確定しました。
「天宮」が光って通過していればどこを通ったかわかるのですが、残念ながら影の通過ではどの程度ズレたのかがわかりません。
ISSでも天宮でも軌道修正はたびたびおこなわれますが、ISS Transit Finderに反映されないほど直近で軌道が変わったのは初めてです。
まあこんなスカもあるんだと良い経験になりました。
しかし見てくださった皆様には「スカ」だけでは申し訳ありませんので、2023年11月26日に「天宮」が今回と同様に影の状態で月面を通過した時のものを貼っておきます。





コメント
観測お疲れさまでした。私も何度かスカの苦い経験あります。
気になったので調べてみました。衛星軌道要素の元締めはSpaceTrackから発効されてるものですが、1月29日から2月1日までに3種(重複除く)のEpochが出てました。1日に5、6回出ることあるので今回は少ないです。この3種に基づいて月面通過を地平座標の差として描いたのが下記の図。プロットは0.1秒おき、中央オレンジ円が月縁です。概ねTransit Finderと合ってますね。
https://kuusou.asablo.jp/blog/img/2026/02/02/7285a3.png
TaizoさんがどのタイミングでISS Transit Finderをご覧になったか分かりませんが、少なくとも最新の31日9時UTC=31日18時JST発効よりは前だったはず。3種のどれになっても月面を横切る計算なので、スカだったのは計算違いや軌道要素起因ではないと思われます。
いっぽう前年秋以降発効された全軌道要素で衛星高度を計算すると下記の通り。11月頃報道されたデブリの衝突や代替神舟のドッキングなどで慌ただしく高度が変わっていたことが分かりますね。12月以降は安定していましたが、1月中旬以降は急激に高度が下がっています。
https://kuusou.asablo.jp/blog/img/2026/02/02/7285a5.png
日面・月面パスの計算に使われる軌道要素は「直近の観測から推測した平均値」であって、リブーストなど突発的な軌道修正は反映されないので、CSS・ISSともに計算通りにならないケースはたまにあるようです。今回のスカの明確な原因は分かりませんが、高度を下げているのと何らかの関係があるかも知れませんね。ルートが変わった以外にも、突然の悪シーイングや観測時計ズレなど他の原因もあるので、現役(?)の頃はリスクを減らすため前後5分くらい観測続けるようにしていました。以上、長文失礼しました。
みゃお@ほんのり光房さん 的確でわかりやすいコメントありがとうございます。
私がISS Transit Finderを最後に確認したのが通過の10分前でした。
今、見ても多少ずれてより中心近くを通過することになっていました。
また、私の友人が北の限界線近くで見ていましたが、確認できなかったようですのでおそらくは月1個分以上にズレたのかなぁと思っていました。
過去には予定の10秒ほど前の鳥の通過をISSを間違えて録画を止めて、画像処理したら羽ばたいていた~なんてこともありました。
そんなこともあるので見ていて楽しいと思います。
最近は中国に限ったことではないですが不穏な情勢を感じますが、それらに無関係であることだけは願いたいですね。
不穏な情勢…どうか平和な世界、穏やかな宇宙利用になってほしいものです。
二ヶ所でスカだと、何らかの軌道修正があったのかも知れませんね。
私も何か写って途中で止めてしまった経験あります。
失敗も含め良い思い出に出来れば、もう怖いもの無しですよ(笑)。
今後とも楽しんでいきましょう。よろしくお願いします。
ありがとうございます!
趣味の世界、楽しければすべて良し!ですね。
私の方こそ、今後ともご教示よろしくお願いいたします。